酒造免許あれこれ 品目編

昨日に引き続き、wikipediaの酒造免許のページにちょっと解説を
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%92%E9%A1%9E%E8%A3%BD%E9%80%A0%E5%85%8D%E8%A8%B1

日本の酒造免許は品目別に分かれている。
登録免許税は各15万円。

wikipeiaには
・試験酒類製造免許
・連続式蒸留しょうちゅう製造免許
・単式蒸留しょうちゅう製造免許
・果実酒製造免許
・甘味果実酒製造免許
・ウィスキー製造免許
・ブランデー製造免許
・スピリッツ製造免許
・原料用アルコール酒製造免許
・発泡酒製造免許
・粉末酒製造免許
・その他の雑酒製造免許
と書いてあるが、
なぜか日本酒(清酒)とビールとリキュールの免許が載っていない。
法律上少し分類が違うんだが、これらに加え「みりん」と「こうじ」がある。

wikipediaって良く使うけど、やっぱり中身は信用できない部分があるよね。

各品目の解説を上から

試験製造免許は大学や酒造メーカの研究室で使用するもので「一切の持ち出し不可」「外部の人間は飲用禁止」というルールがある。もちろん販売もできない。研究向けの例外的な認可だ。

日本酒(清酒)は「米・米麹を原料とし、漉したもの」と書かれている。必ず漉さないといけない。乳酸やアルコールを足したりクエン酸を足したりしてもいいが、1つルールがある”漉した後に足してはいけない”のだ。漉した後に足すと混和とみなされリキュール(混和酒類)の無許可製造つまり密造になってしまう。
逆にどぶろく特区でどぶろく(濁酒)を作る場合は「米・米麹を原料とし漉さないもの」とあるのでろ過や遠心分離をすると清酒の密造になる。

焼酎はなぜか単式と連続式に分かれている。昔は単式は甲種、連続式を乙種と呼んでいたが法改正で変わった。でも今でも乙種焼酎とか書いてるものがあり慣例として残っている。
焼酎の定義は”穀類を醸し蒸留したもの”で、「リンゴを蒸留してリンゴ焼酎だって言い張ったら焼酎免許で作れますか?」と聞いたら穀類じゃないからダメといわれた。
さつまいもって穀物なんだろうか?

果実酒は”果物を発酵させたお酒”英語のwine(醸造酒)のこと。イチゴやリンゴを使ってもよい。
ただしマディラワインやシェリー酒のような酒精強化ワインは製造できない。これはその下の「甘味果実酒」になる。
青森や長野でリンゴが作られているのでワインベンチャーはシードル(リンゴの醸造酒)を作っている所が多い。ワインと同じ設備で作れるし時期がズレるから両方作ることが出来る。
ただしこれを蒸留してカルバドスを作っている所はない。蒸留するにはスピリッツ免許がいるからだ。

ウイスキーとブランデーは日本ではどちらも高級酒だが、本当は違う。コニャックをはじめとしたブランデーは貴族の飲み物だが、ウイスキーは麦で作ったどぶろくで貧乏人が飲むものだ。安くて日持ちするので船乗りがよく船に積んだ。大英帝国が世界を支配した時に世界各地に普及したんだ。
今では上流階級も飲むけど、イギリスの首相チャーチルは著書の中に「私の父の世代は夜に読書をしながら暖炉の前で飲むものと言えばブランデーと決まっていた」なんて書いてある。スコッチを貴族が飲むなんて考えられないんだそうだ(イングランド人はスコットランドを「ど田舎」として下に見てる)。

発泡酒免許は地ビールのこと。地ビールベンチャーが作ってるのがこの免許だ。
ビール免許は最低数量が大きいので認可をとるにはそれだけの製造設備が必要だ。発泡酒免許なら小規模の設備でとれるし、麦100%の本格的なビール以外のものなら大体作れるので人気がある。

酒を学術的に分類すると3つに分けることが出来る。醸造酒(wine),蒸留酒(spirit),混和酒類(liqueur)だ。
この大分類の下に日本酒やワインや酒精強化ワイン、ウイスキーやラム酒やテキーラ、カクテルや梅酒やアブサンが入る。
日本の免許の分類はこの大分類と小分類がごちゃまぜになっている変な制度だ。

酒税法の中では、
醸造酒の中で日本酒でもワインでも甘味果実酒でもないヤツが「その他醸造酒」
蒸留酒の中で焼酎でもウイスキーでもブランデーでもないヤツが「スピリッツ」
それ以外の酒が「リキュール」になる
なのでこの大分類の名前がついてる3つの免許はざっくりいうと「その他」ってことだ。特にリキュールの場合、その他の中のその他みたいなもんだ。
この3つは品目による制約が無いので他の免許と違い作れるものが多い。個性が出しやすいジャンルといえる。その他醸造酒(雑酒)だと古代米の赤米を使った酒、韓国のマッコリなんかもそうだ。(10年位前だがマッコリで大もうけした在日のオバちゃんが罰金5億で新聞に載った。正規に免許とってたら大もうけだったのにもったいない)。スピリッツ免許はラム酒でもカルバドスでもウォッカでもなんでもいい。リキュールは梅酒からカルーア、アブサン、ラク、養命酒などそれこそたくさんある。
逆に品目でがんじがらめにされる日本酒の場合は個性を出すのがかなり難しい。純米酒で精米歩合を競うというゲーム展開になっているように思う。

原料用酒類と粉末酒は現在では取得する人はいない。
原料用酒類は経産省管轄のアルコール事業法と重なる分野でこっちをとったほうが何かと融通が利く。飲食店が使うアルコール消毒液は誤って口に入れてもいいように飲用可能のエタノールで作られている。そういったアルコールを使うもの用のアルコールを作るのがアルコール事業法の認可で酒にも使用可能だ。逆に原料用酒類の免許だと販売先が酒造メーカに限られるのでとるメリットが無い。

粉末酒はエタノールを粉末状にする技術を利用したもので、水に溶かすとお酒になる粉状の酒だ。これは戦前戦後に研究されてたんだが致命的な欠陥があって商品としては絶滅した。”美味しくない”んである。

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